あのタクシーに、もう一度乗りたい
29歳 · 女性 · 約4分
編集部制作 — 実話かどうかは、想像にお任せします
雨の夜に乗ったタクシー。二週間後、偶然また同じ運転手さんの車に乗りました。三度目に会ったのは、タクシーの中ではありませんでした。
こんなことを書くと、「そんなことある?」って言われると思います。
その日は友達と飲んでいて、帰りがかなり遅くなりました。
雨も降っていたので、駅からタクシーに乗りました。
運転手さんは40歳くらい。
最初は普通の会話でした。
家の近くまで来たところで、財布に現金がないことに気づきました。
家へ取りに戻り、支払いをすると、
「楽しかったからいいですよ」
と言われました。
ドアが閉まる直前、
「また乗ってくれたら嬉しいです」
と言われました。
それから2週間くらい経った金曜日。
またタクシー乗り場から乗ると、
「あ」
と言われました。
あの人でした。
「また乗ってくれましたね」
二人で笑いました。
その日は家の前に着いても、メーターを止めたまま10分くらい話していました。
「いつも金曜日、この辺走ってるんですか?」
私から聞きました。
その質問をした時点で、また会いたかったんだと思います。
それから何度か金曜日にタクシーを使いました。
でも会えませんでした。
しばらくして、知らない番号から電話がありました。
「あの、タクシーの……」
車内にイヤリングを落としていたそうです。
「営業所に届けておきます」
と言われました。
「今持ってます?」
なぜそんなことを聞いたのか、自分でも分かりません。
「じゃあ、取りに行ってもいいですか?」
待ち合わせたのは24時間営業のファミレスでした。
制服ではない彼を見るのは初めてでした。
イヤリングを受け取り、そのまま2時間くらい話しました。
帰りは彼の自分の車で送ってもらいました。
家の前に着いたのに、私はドアを開けませんでした。
彼も何も言いませんでした。
しばらくして彼がこちらを見ました。
そこで初めてキスしました。
そのあと、
「上、行きます?」
と私から聞きました。
今思い出しても、よくそんなことを言ったと思います。
彼は少し笑って、
「明日、後悔しません?」
と言いました。
「明日にならないと分からない」
と答えました。
朝、目を覚ますと、隣に彼はいませんでした。
一瞬、全部夢だったのかなと思いました。
でもテーブルに、あのイヤリングが置いてありました。
その横にコンビニのレシートがあって、裏に電話番号と、
「今度は普通にご飯に行きましょう」
と書いてありました。
その後、何度か会いました。
半年くらいして彼はタクシーの仕事を辞め、自然に連絡も取らなくなりました。
今でも雨の日にタクシーに乗ると、運転手さんの顔を一度確認してしまいます。
もう会うことはないと思っているのに。
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